口腔癌では、多数の培養細胞株が確立され、浸潤・転移のメカニズムの解明が進められている。しかしながら、腺様嚢胞癌培養細胞は細胞増殖が緩慢なため、細胞株として樹立された系は非常に少ない。そこで本研究では、ヌードマウス皮下腫瘍を口底に同所性移植し、数回繰り返すことでヌードマウス肺転移モデルを作成し、さらに肺転移病巣より高転移性細胞株を培養系で樹立し、クローニングすることが目的である。また、親株と高転移株を比較することで腺様嚢胞癌における肺転移のメカニズムを解明したい。 本研究は、1)ヌードマウス皮下移植腫瘍の同所性移植によるin vivo肺転移モデルの作成、2)in vitroにおける高肺転移株の樹立、3)細胞外基質分解酵素の発現に関する解析を明らかにすることを目的とする。 1.ヌードマウスの口底に同所性移植を行ったが、移植後4ヶ月では肉眼でも病理組織学的にも口底と肺への腫瘍が確認されなかった。そこで、移植後の期間を4ヶ月後から1ヶ月ごとの順に屠殺し口底腫瘍を確認しているが、現在のところ移植1年後で微小な口底腫瘍を確認した。肺転移はみられていないが、初期の転移は肉眼的には確認できないため同肺組織をヌードマウス皮下へ移植し腫瘍が増大してくるのを観察している。また、継代により自然頸部転移腫瘍を認め、同腫瘍を継代することにより肺転移が認められたが、両腫瘍とも病理組織学的に未分化癌であっため分化誘導剤などにより腺様嚢胞癌に分化するか観察している。 2.上記のように肺転移株が作成中であるため、培養細胞株の樹立ができていない。しかしながら自然頸部転移腫瘍の肺転移が腺様嚢胞癌であることが確定されれば同腫瘍の培養細胞株の樹立を試みる予定である。 3.細胞外基質分解酵素に関しても上記モデルが確定していないため解析できていない。 以上の結果より、今回の実験では同所性移植腫瘍の増大が予想以上に緩慢なことと肺転移が現在のところみられていないため、結果を出すには、さらに数年単位の研究の継続が必要である。しかしながら、自然頸部転移腫瘍の継代による肺転移が認められていることから、同両腫瘍が腺様嚢胞癌と診断できれば可及的早期に研究の成果がみられるかもしれない。
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