研究概要 |
歯の移動にともなう骨改造現象、特に骨吸収に中心的な役割を果たしている破骨細胞に対してカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などをはじめとする各種神経ペプチドがいかなる作用を有するかを検討するために、50日齢ウィスター系ラット上顎臼歯部歯根膜内におけるCGRP, Vasoactive Intestinal Peptide (VIP)、Substance Pの局在について免疫組織化学的に検索した。また、最終年度においては、培養破骨細胞に対してCGRPがいかなる作用を示すかについても検討した。 その結果、生理的状態下で観察されたCGRP、Substance Pを含有する歯根膜内神経線維は、移動開始初期において一過性に減少あるいは消失したが、移動開始数日後にこれらの神経ペプチドに対して免疫陽性を示す神経線維が再度観察されるようになった。それらの神経線維の一部は、歯牙移動にともなって歯槽骨表面に多数観察されるHawship窩(骨吸収窩)に侵入していた。それぞれの神経ペプチドの局在についてみると、CGRPが骨形成を活発に行っていると考えられる細胞質の豊富な骨芽細胞上および吸収窩に存在する一部の破骨細胞上で、またSubstance Pは一部の破骨細胞上でそれぞれ局在が認められた。一方、佐藤らによるplastic dishesへの吸着性を利用した破骨細胞単離法によりCGRPの破骨細胞活性への影響をin vitroの実験系で検索した結果、isolated, unfractionatedいずれの破骨細胞に対してもCGRPは抑制的に作用することが示された。 以上のことから、実験的歯牙移動により生じる歯槽骨改造現象に重要な役割を演じている破骨細胞などの歯根膜細胞に対してCGRPをはじめとした神経ペプチドが間接的あるいは直接的に何らかの影響を与えていることが明らかとなった。
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