研究概要 |
Porphyromonas gingivalis線毛遺伝子(fimA)は核酸配列の違いにより5つの型に分類される.Polymerase chian reaction(PCR)法を用いたプラーク細菌叢の分析を行い,歯周病患者から分離されるP.gingivalis株と健康な歯周組織を有する被験者からのP.gingivalis株の線毛遺伝子(fimA)型の相違を検索した.その結果,重度の歯周炎患者から検出されたP.gingivalisは90%以上がII型線毛を有する菌であるという極めて興味深い結果を得た.歯周炎との相関の相関の強さ示すオッズ比は,II型線毛のP.gingivalisでは44であり,II株線毛株は歯周病の有力な原因因子であると考えられた.歯周炎に高い感受性を示す遺伝的素因を有し,早期に重篤な歯周疾患が併発するダウン症候群成人患者と,プラークコントロールが著しく不良な精神発達遅滞成人においても同様の検討を加えたところ,歯周病の重篤度とP.gingivalisのII型線毛保有株との強い関連性が認められた.実験室レベルでの研究において,5つのタイプのリコンビナント線毛を新たに作製したところ,他の型の線毛タンパクに比べ,II型線毛タンパクは上皮細胞内へ有意に高い侵入能を示すことも明らかとなり,II型線毛は強力な歯周炎リスク因子であることを支持している.現在,細胞間接着因子であり,歯周組織の修復に関与するα5β1,αvβ3インテグリン分子を強発現させたCHO細胞を用いて,各リコンビナント線毛との結合解析をBlAcoreを用いて行っている.また,新たに6番目のP.gingivalis線毛遺伝子を同定し,ジーンバンクに登録するとともに,その病原性を探っている.
|