本研究においては、歯科保健の保持、増進が健康維持ならびに健康年齢の延長にどのように寄与するかを明らかとすることを目的として、同一の対象者の最高18年間にわたる口腔保健ならびに健康、生活状況の推移について経時的な介入の効果をも含めた調査分析をおこなった。 1998(平成10)年度に実施した高齢者全数1068名のうち現存歯20本以上の者は14%で、4割がすべての歯を喪失していた。また半数以上が「健康」「普通」としているが64%が何らかの疾患で治療中であり、2%が「外出時に要介助」あるいは「全面要介助」であった。上記の対象となった高齢者の現時点における生存状況ならびに死因についての追跡調査については、プライバシー保護の面から多くの資料が未確認である。 受診者の既往疾患では高血圧30%、心臓病11%、胃腸病10%、目10%、神経8%等の回答で、治療中の疾患数は、1疾患が36%、2疾患が17%、3疾患以上が3%であった。一見は健康に見える高齢者の多くが何らかの健康問題を有しており、介護予防の立場からも歯科保健を含めた生活習慣病の予防対策が必要である。 歯科健診等を受けて現在歯数が確認できた高齢者のうち、80歳以上で20本の歯を有する高齢者と無歯顎の80歳以上高齢者について、老人医療の受療状況にあらわれる健康や疾病受療状況について、国民健康保険診療の老人医療費について調査した結果からは、1年間のうち30日以上の入院者の割合は、無歯顎の80歳以上高年齢者全体の19%に及ぶ一方で、8020達成者ではその6%にあたる数であった。また、3か月以上の長期入院者の割合は無歯顎者では7%、8020達成者ではゼロであった。また、8020達成者の一人あたり平均入院日数は全ての歯を喪失した80歳以上の無歯顎者の約20%であった。
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