研究概要 |
本研究は、8020運動等として進められている歯科保健の保持、増進が健康維持ならびに健康年齢の延長にどのように寄与するかを明らかとすることを目的として実施した。 兵庫県N町の高齢者全数1,068名のうち現存歯20本以上の者は14%、4割がすべての歯を喪失しており、64%が何らかの疾患で治療中であり,2%が「外出時に要介助」あるいは「全面要介助」であった。上記のうち、無歯顎者と20歯以上の保有者について比較したところ、食事や生活上の制限、生き甲斐感、社会的活動性において、20歯以上の保有者は無歯顎者より優れていた。 80歳以上高齢者のうち、20歯以上の保有者と無歯顎者の国民健康保険診療の老人医療費について調査した結果からは、1年間に30日以上の入院者の割合が無歯顎では19%、20歯以上の保有者では6%であった。3か月以上長期入院者は無歯顎者の7%、20歯以上の保有者ではゼロであった。20歯以上の保有者の一人あたり平均入院診療日数は無歯顎者の約20%であった。 N町において1983年以来実施している口腔診査受診者のうち事後の個別指導をうけていない者の1年あたり平均喪失歯数は40〜49歳で0.4本、50〜59歳で0.73本であったが、PMTCを伴う個別指導としての口腔ケアを3回以上受けた者においては40〜49歳で0.21本、50〜59歳で0.33本と半数以下であった。これらの健診受診者の現時点における生存状況、死因の追跡調査はプライバシー保護に配慮しつつ継続中である。
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