研究概要 |
申請者らは,ヒト培養歯根膜細胞細胞系統の同定を目的として,今年度は既報の骨芽細胞関連遺伝子の動態を解析し,同時に遺伝子導入の実験手法を確立した。 ヒト小臼歯の抜去歯よりoutgrowth法で調整した培養歯根膜細胞の培養ステージにおけるalkaline phosphatase(ALP),cbfalをはじめとする各種骨芽細胞関連遺伝子の発現を検討した。RT-PCR法によりALP,cbfal,osteonectin,osteopontin,osteocalcin,type I collagen,bone sialoproteinのmRNA発現を検出した。上記方法で培養した細胞は各種の細胞が複数の成熟,分化過程で混在しているため,個々の細胞の遺伝子発現の増減を検討できなかった。そこで歯根膜細胞をクローン化し,単一の細胞集団としたうえで,それぞれの細胞の骨関連遺伝子の発現等を検討した。クローン間でALP活性の違いや,培養系での石灰化能の違いが認められたにもかかわらず,骨関連遺伝子のmRNAの発現量に差はなかった。特にALPはその活性が著しく異なるクローン間でもmRNA発現に差が認められず,歯根膜細胞にはALPの蛋白質の翻訳後,細胞内合成経路,膜輸送経路の違いを示す細胞が混在していることが推測された。またヒト培養歯根膜細胞の細胞系統を,既知の骨芽細胞関連遺伝子の発現により同定することは困難であることが明らかになった。一方,培養細胞への遺伝子導入にはレトロウイルスを用いた遺伝子導入を選択し,ベクターの構築と,外来遺伝子の効率的導入が可能な実験系を確立した。
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