研究概要 |
筋が収縮する際,筋線維は側方に拡大変形する,この変形を筋音として計測,解析することによって,筋電図とは異なる筋の機能的特性の把握が可能になると考えられる.そこで,成人男性7名に最大咬合力の60%までの数段階の咬合力(%MVC)を発揮させ,咬筋収縮に伴って発生する筋音を導出,同時に表面筋電図を記録した.そしてそれら両者の波形の特徴から,筋音と筋電図との関連を調べた.筋音の導出にはアモルファス変位センサを用いた.その結果, 1.筋音波形の振幅は発揮される咬合力の増大と共に大きくなり,20%MVCにおいて最大値を示し,更に大きな咬合力が発揮されるに従って小さくなる傾向を得た.筋電図波形の振幅は咬合力の増加に比例して大きくなる傾向を示した. 2.咬合力の変化による周波数分布については,筋電図では発生する周波数成分に変化がみられなかった.しかしながら,筋音では咬合力が大きくなるに従って,より高い周波数帯にパワーが分布し,ピークの中心はより高い周波数に移動する傾向を示した. 3.咬筋に発生する筋音の周波数帯は0〜30Hzであり,パワースペクトルにおけるmedianは5.4〜8.5Hzであった. 以上から,咬合力の増大に伴う筋音と筋電図波形は,その振幅や周波数特性において異なる変化傾向を示し,筋電図に加えて筋音を同時測定することは筋の機能特性をより詳細に知る上で有用であることが示唆された.
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