本研究の目的は、時間生物学的方法による動物の学習・記憶効果の評価方法を開発し、咀嚼が学習・記憶に影響するかどうか及びそのメカニズムを検討することである。 ラットの給餌を一日の一定時刻に制限(周期的制限給餌:以下RF)することを約2週間続けると、血中コルチコステロン(以下CORT)のパターンが変化し、給餌の1. 2時間前より血中CORTレベルが増加し(これを給餌前ピークという)(=同調)、RFを中止後もしばらく持続する(=フリーラン)。すなわちRF下において、血中CORTの給餌前ピークが出現すれぱ、「学習」が形成されたと考えられ、RFの中止後も給餌前ピークが認められれば「記憶」が形成されたと評価し、またその給餌前ピークの強弱で「学習」・「記憶」の強さを評価することが可能である、と考えられる。 今年度に行った研究によって得られた新たな知見を以下に示す。 ・血中コルチコステロン食餌前ピークの形成について 固形飼料による制限給餌、頚静脈のカニューレからの高カロリー輸液による制限給餌、液体飼料を胃に直接与える制限給餌液体飼料による制限給餌を行ったところ、固形飼料による制限給餌により、食餌前ピークが形成され、このピークは食後、消失した。液体飼料による制限給餌でも、食餌前ピークが形成されたが、その程度は固形飼料によるピークに比較して、低かった。これらに対して、高カロリー輸液あるいは液体飼料を胃に直接与える制限給餌を行っても、食餌前ピークは形成されなかった。これらの結果より、食餌前ピークの形成(学習の形成)には、口腔を介して、栄養を補給することが重要と考えられた。
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