本研究は、成人性歯周疾患と心疾患との関連を立証するための基礎的知見を得るために実施したものである。 平成12年における本研究において以下のことが明かとなった。 1.成人性歯周疾患原因細菌であるPorphyromonas gingivalisのうち、その菌体表層に線毛を持つ株はヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)ならびに冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)に多く付着することが認められたが、線毛欠損株においては、その付着は少なかった。 2.精製線毛はHUVECならびにHCAECに特異的付着することが競合阻害実験により明かとなった。 3.精製線毛はHCAECのトリプシン産生を強力に誘導することをRT-PCRならびにウエスタンブロットにて確認した。 4.精製線毛によるHCAECからのトリプシン産生誘導は抗線毛抗体により抑制された。 以上のことより、歯周病原性細菌はヒト心臓血管系内皮細胞に線毛を介して特異的に付着し、異常血液凝固因子の産生を心局所において誘導する可能性が示唆された。
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