研究概要 |
う蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌は生後19か月から31か月の間に主な養育者が母親である場合、母親を由来として児に定着すると報告されている。しかしながら,我が国における定着時期についての調査は少ない。そこで我々は岩手県平泉町において生後3か月時点から,児のミュータンスレンサ球菌の検出,母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数,齲蝕の発生および育児習慣について追跡調査を行い,これらの関連について検討中である。今回は、2歳6か月時にう蝕の認められた児と、う蝕の認められなかった児について1歳時、1歳6か月時、2歳6か月時の各時期における育児状況のアンケート結果およびミュータンスレンサ球菌の検出状況、母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数との関連について比較検討を行った。その結果、2歳6か月児のう蝕有病者率は21.1%、一人平均df歯数は0.93本であった。2歳6か月時におけるう蝕発症の関連要因を知る目的で、2歳6か月時のう蝕の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、1歳時における哺乳瓶による含糖飲料の摂取,大人との食器の共有,2歳6か月時における毎日の仕上げ磨きの有無、1歳時および1歳6か月時におけるミュータンスレンサ球菌の検出状況が有意な関連要因であった。また、ミュータンスレンサ球菌の検出時期と2歳6か月時におけるう蝕発症との関連をみてみると、1歳時からミュータンスレンサ球菌が検出された児は、2歳6か月時に初めてミュータンスレンサ球菌が検出された児に比較して有意に高いう蝕発症率を示した。今回の調査結果から、児の口腔内のシュクロースの存在がミュータンスレンサ球菌の早期定着を促し、その早朝定着がう蝕発症要因の一つであることが示唆された。
|