研究概要 |
本研究はDNA多型の検査において、高度変性資料からの多型検出に際し、実用度の高い判定方法を確立することを目的としている。本年度得られた結果を纏めると以下の如くである。(1)歯牙及び血痕から抽出した変性DNAを資料として、VWA locus(126-170bp)およびCD4 locus(86-121bp)の型判定を試みたところ、増幅効率と型判定の可、不可は必ずしも増幅産物の大きさと一致しないことがわかった。(2)Y-STRのDYS389locusの増幅産物を小さくして、変性DNAからの検出を試みたところ、増幅産物を小さくすることにより増幅効率は上がったが、型判定に誤りを生じる場合がでてくることがわかった。(3)ミトコンドリアDNAのHVIおよびHVII領域の塩基配列を120例の日本人につき検討したところ、111型に分類され、genetic diversityは99.03%と計算された。また日本人を積極的に識別することを目的としたミトコンドリアDNAのhaplotypeを作成し、日本人を大きく16型に分類した。この分類法で約80-90%の白人と日本人は識別可能であったが、韓国人は共通のhaplotypeを共有するものが多かった。黒人、中国人、中央アジア人などはHVIIのデータがないが、地理的な距離に一致して、その違いは増しているようであった。(4)144人の日本人男性につき10種のY染色体上のSTR多型(DYS19,388,389I,389II,390,391,392,393,385,156Y)のハプロタイプを比較したところ、123型に分類され、haplotype diversityは98.94%と算出された。各多型の分布は日本の他地域のデータと有意差を認め、日本内部においてもY染色体多型には地域差が存在するものと考えられた。 我々の結果では現在多用されているSTRは、変性DNAに対しては必ずしも最適なものではなく、塩基置換の多型を応用することが望ましいと考えており、13年度は多型性の高い塩基置換多型に主体をさらに移しながら、人種識別の可能性も念頭に入れて検討していくつもりである。
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