研究概要 |
歯の移動時の破骨細胞と骨芽細胞とのカップリングについて、歯の移動の初期反応の時期(歯の移動:1,2,3,4,5日間)に着目して、まず牽引側歯根膜表面-隣接歯槽骨内-圧迫側骨膜骨表面に出現する破骨細胞の動向を連続横断切片上から得られた破骨細胞の実質細胞数を計測し、さらにそれらの破骨細胞の形態的かつ組織化学的検索から機能的活性度、骨髄からの補給体制について検討した。その結果、(1)歯根膜側および骨膜側骨表面の増加した破骨細胞数のピークは、それぞれ4日目と4〜5日目にみられた。(2)観察されたほとんどの破骨細胞は、活性度が高かった。(3)対照群の4日目の骨髄には比較的多くのTRAP陽性の単核細胞が見られたが、実験群では単核細胞に加えて既に多核の破骨細胞にもTRAP陽性が検出された。近接する洞様構造内、さらに歯根膜へ通ずる開窓部に至る領域では破骨、細胞は散在していた。(4)歯槽骨の深部では、頬側面の骨膜側に比べて、歯根膜側への破骨細胞の出現は多かった。以上から、歯の移動初期の牽引側歯根膜骨表面-隣接する歯槽骨内-王迫側骨膜骨表面において、骨髄からの破骨細胞の補給が脈管を通してほぼ行われていることがわかった。骨髄からの補給体制は、脈管を含む洞様構造内を交通路として、歯槽骨内1/2中央から歯根膜側と骨膜側に補給され、alveolar crestから100〜300μmの領域では、歯根膜側の歯槽骨内では、歯根膜への洞様構造の骨吸収による拡大と骨芽細胞の増殖の誘導一方、骨膜側歯槽骨内では、粘膜組織の圧迫によって内部吸収(背後吸収)が惹起されることがわかった。しかし、歯槽骨深部では、歯の傾斜移動のため、根尖は骨壁寄りに移動され、その隣接領域は圧迫側として破骨細胞出現の要因となっている。一方、骨膜側の歯槽骨内洞様構造にはほとんど破骨細胞は見られなかった(alveolar crest領域に比べて基底部の骨膜側は歯の移動による歯肉の牽引力の影響がなかったものと思われる)。
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