研究概要 |
本年度は歯周組織再生のためのコラーゲン線維膜が備えるべき条件を検討した.歯周組織再生には骨芽細胞が十分その機能を発揮できる条件を患部に付与することが必要である.申請者は骨芽細胞としてラット骨髄から採取した骨髄幹細胞を用いた.骨髄幹細胞はコラーゲンマトリックスとともに培養すると骨芽細胞へ分化することが報告されているので,まず骨髄幹細胞を中性化コラーゲン溶液と混和した後,コラーゲン線維膜に薄く塗布し,CO2インキュベーター中で約2時間放置しゲル化させた.この操作により細胞はコラーゲン線維膜に固定されることになる.このような細胞を固定したコラーゲン線維膜を培養し骨芽細胞の形質発現がどのように変化するかを調べた.培養を開始して約3週間後には高いアルカリフォスファターゼ活性が認められた.アルカリフォスファターゼは骨芽細胞で高い活性を示すことから,コラーゲン線維膜上で骨髄幹細胞は骨芽細胞へ分化していることは明らかである.次にコラーゲン線維膜にbFGFを添加して骨芽細胞の数,アルカリフォスファターゼ活性がどのような変化を示すかを調べたところ,細胞数は増加したもののアルカリフォスファターゼ活性は低下していた.このことはbFGFは増殖を促進して分化を抑制していることを示している.次に骨芽細胞分化を促進する作用があるBMPをbFGFとともにコラーゲン線維膜に添加したところ,細胞数,アルカリフォスファターゼ活性は対照との間に差は見られなかった.BMPは分化を促進するが細胞増殖を抑制することから,お互いの効果を打ち消した可能性が高い.今後はまずbFGFが働き,ついでBMPが機能を発揮できるような条件を検討する予定である.
|