研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き歯周組織再生のためにコラーゲン繊維膜が備えるべき条件を検討した.コラーゲン繊維膜に各種成長因子を混合することは骨芽細胞が機能を発揮する上で効果的であり,特にbFGFは細胞増殖をBMPは分化を促進することが明らかとなった.しかし両者を同時に混合するとお互いの効果をうち消し合うため骨誘導の促進はみられなかった.そこで本年度はbFGFのみで骨誘導を促進できる条件を検討した.コラーゲン繊維膜が有する骨誘導能は骨芽細胞で特異的に発現している遺伝子の定量を行なうことで評価した.高濃度のbFGF(20ng/ml以上)をコラーゲン繊維膜に混合し培養すると,細胞増殖が顕著に認められたが骨芽細胞のマーカー遺伝子であるOsteocalcin(OCN)遺伝子,Bone sialoprotein(BSP)遺伝子発現が抑制された.一方低濃度のbFGF(2ng/ml以下)ではOCN,BSP遺伝子の発現促進が認められた.以上の結果はbFGFが高濃度では細胞増殖のみが著明に起こり,骨髄幹細胞が骨芽細胞に分化することで発揮される骨誘導促進効果は抑制されることを示している.そしてこの事実はコラーゲン繊維膜に混合するbFGFはある濃度以下でなければ骨誘導の促進がみられないことを意味している.来年度以降はbFGFが有する骨誘導促進効果の至適濃度を明らかにし,さらにその濃度を維持できるようなコラーゲン繊維膜の開発を行う
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