新生骨形成に関連した細胞外マトリックス遺伝子発現を定量的に把握するため、各細胞外マトリックスをコードしている遺伝子のうちの、プロモーター部位とリポーターとを結合させた遺伝子フラグメントを、骨シアルタンパク(BSP)、オステオカルシン(OC)について骨由来の細胞株ROS17/2.8に対して、遺伝子導入し、安定的な形質発現を生じる細胞株を得ることができた。BSPとOCはとくに骨形成との特異的な関連性が高いとされるもので、かつ、骨形成の初期と晩期を代表していて、最終的な目標としての骨形成の状態を骨形成のステージの成熟度を加味して定量的に、in vitroで把握することには十分な成果であると思われる。 まず、上記二種の細胞株の細胞外マトリックスとの相互作用を検討すべく、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニン、を各コートしたディッシュと通常のディッシュ上での培養を行い、コーティングにより、リポーターであるβ-ガラクトシダーゼの発現量に明らかな違いが生じることを確認した。すなわち、これら細胞株が、細胞外マトリックスを認識し、その分化程度を変化させることが示唆された。また、注目すべき事には分化程度の変化が形態的にはまったく観察できなかったことである。 次に、これら細胞株を各種表面処理と施した生体材料上で培養し、材料表面ミクロ構造の骨形成への有用性の検証を行った。結果として、表面処理においてある程度の表面粗さが良い結果を生じるが、アンダーカットを生じるような処理は逆効果であることが示唆されたが、結果のばらつきが大きく、さらに材料表面への細胞の最適なプレーティング、表面荷電状態の把握等、今後の検討課題も残された。
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