研究概要 |
1.細胞死誘導因子の精製 Bacteroides forsythusの超音波破砕物をDEAE Sepahroseカラムを使用し、精製を行った。DEAEカラムにおいて、各画分を濃縮、稀釈系列を作製後、HCT116細胞とKB細胞に48時間作用させ、WST-1アッセイにより細胞死誘導活性を検定した。その結果、100-200mM NaCl画分に細胞死誘導活性が認められた。細胞死誘導活性1ユニット(u)を「100μlの培地中の1x10^4細胞に投与した時48時間で50%の細胞を死滅させる活性」と定義し、タンパク量当たりの比活性を計算すると、超音波破砕物が0.03u/μg,DEAEカラム分離画分が0.54u/μgであった。 2.口腔癌細胞株に対する当該因子の作用 口蓋、口底に発生した扁平上皮癌由来の樹立化細胞にB.forsythusの超音波破砕物を5μg protein/100μlを最高濃度として稀釈系列を作製し、48時間作用させWST-1アッセイを行ったところ、濃度依存的に細胞死が誘導された。さらに、血球系、上皮系の細胞の他に扁平上皮癌においても細胞死の誘導が認められたことにより、本因子はヒトに共通のレセプターを介するか、或いは、非特異的に細胞を障害すると考えられる。 3.細胞の形態変化 HL-60細胞については、報告済みのSEM像に加え、B.forsythusの超音波破砕物を作用させた細胞のTEMによる観察を行った。その結果、核の断片化・凝集とともに、細胞内構造物の膨潤・空胞といった細胞質の破壊が認められ、これらの細胞死は、アポトーシスとネクローシスの融合であると考えられる。 HCT 116細胞(上皮系細胞)を用いSEM,TEMによる観察を行った。SEM所見:細胞膜にrufflingが認められ、典型的なアポトーシス像とは異なっていた。TEM像:HL-60細胞所見とほぼ同様な知見が得られた。
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