研究概要 |
1.各種細胞に対する殺細胞因子の作用 扁平上皮癌由来細胞、血球系、上皮系の細胞にB.forsythusの超音波破砕物を作用させWST-1アッセイを行ったところ、濃度依存的に細胞死が誘導された。よって、本因子はヒトに共通のレセプターを介するか、或いは、非特異的に細胞を障害すると考えられる。 2.細胞の形態変化 HCT 116細胞を用いSEM, TEMによる観察を行った。SEM所見:細胞膜にrufflingが認められ、典型的なクポトーシス像とは異なっていた。TEM像:核の断片化・凝集、細胞内構造物の膨潤・空胞といった細胞膜の破壊が認められた。 3.殺細胞因子の精製 Bacteroides forsythusの超音波破砕物をDEAE Sepahroseカラム、ゲルろ過により精製を行ったところ、28kDa,40kDa超の2分画に活性が認められた。A_<254>、A_<280>の比較から、本因子は、細菌のDNAと相互作用すると予想され、DNaseIと作用させたところ、28kDaに収斂し活性が認められた。よって、当該毒素は、DNA結合性のタンパク質であることが強く示唆され、さらにヘパリンカラムを用いて精製を行なったところ、強い活性を示す分画を得た。 4.坑殺細胞活性モノクロナール抗体の作製 マウスをB.forsythusの超音波破砕物で免疫した後、リンパ球を分離し、マウスミエローマの細胞株に融合させた。その後、ハイブリドーマから、坑殺細胞活性を保有する抗体を産生するクローンを分離した。 5.細胞周期への影響 MA-1細胞に精製因子を作用させ、P53,Cyclin B1に対する抗体にて染色後、フローサイトメトリーにて分析した結果、殺細胞因子を作用させた細胞は、G2 arrestを起こし、かつ同時期において高レベルのp53,Cyclin B1の発現が認められた。 以上の結果より、本毒素は、CDTの新メンバーであることが示唆される。
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