研究概要 |
歯周病原因菌の歯周ポケット局所でのバイオフィルム形成の特異的な阻害を通じて,歯周病の発症・進行を抑制するという目的のために,共凝集活性の強いFusobacterium nucleatumの共凝集の特異的な抑制方法を検討する以下の実験を行った. 1)各種歯周病原因菌とF.nucleatumとの共凝集活性を検討したところ,F.nucleatum ATCC10953は,Porphyromonas gingivalisFDC381,Prevotella intermedia ATCC25611,Campylobacter rectus ATCC 33238などとの間で強い共凝集活性を示した. 2)この共凝集はいずれもL-arginine感受性で,糖では阻害されなかった. 3)また,この共凝集は,F.nucleatumATCC10953のL-arginine感受性赤血球凝集素に対するポリクローナル抗体で強く阻害された.この抗体による阻害は,赤血球凝集に対する阻害とは異なった傾向を示したことから,共凝集と赤血球凝集は違う結合部位が関与している可能性が示唆された. 4)P.gingivalisのL-arginine感受性赤血球凝集素やトリプシン様酵素の既知の遺伝子配列をもとにプライマーを設計し,PCR法でF.nucleatum遺伝子上のL-arginine感受性共凝集因子遺伝子の検出を行っているが,現在のところ,まだ相同性を持つ遺伝子は検出されていない.現在,プライマーの設計を変えるなどの方法で,さらなる実験を行っている. 5)現在,L-arginine感受性赤血球凝集素に対するモノクローナル抗体作成の準備中である.
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