研究概要 |
平成13年度では,1.歯肉溝滲出液および唾液中のラクトフェリン量の定量,2.歯肉あるいは歯根面におけるラクトフェリンの分布について検討した。 1.Ora flow社製ペリオペーパー(歯肉溝滲出液)あるいはサイアロペーパー(唾液)によって採取したサンプルについて,液量をペリオトロンにて計測した。その後,サンドイッチELISA法によりラクトフェリン量を定量した。現在,サンプル数を増やし,健常者と歯周病患者との間でラクトフェリン量に差が認められないか検討中である。 2.歯周外科時に歯肉内縁上皮を含む試料を採取し,液体窒素中でO.C.Tコンパウンド(SAKURA社製)に包埋した。クライオスタットで超薄切片を作製し,ペルオキシダーゼ標識ウサギIgG(カッペル社製)を用いた免疫組織染色を行った。しかし,切片中にはラクトフェリン陽性の染色像は認められなかった。 また,抜去歯をウサギ抗ヒトラクトフェリン抗体(カッペル社製)およびアレキサ532標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(カッペル社製)にて蛍光染色し,モレキュラーイメージャー(バイオラッド社製)により観察した。抜去歯を撮影した画像と蛍光画像を比較したところ,強く蛍光を発する部位には歯石の付着が認められた。よって,ラクトフェリンは歯石が付着している部位に分布している可能性が示唆された。 根面表層に分布するラクトフェリンが歯根全体に均一に分布しているかどうかを調べるために,根面を表層から歯髄腔まで一定量ずつ切削し,その中に含まれるラクトフェリン量を定量した。その結果,歯石付着の有無に関わらず,表層から歯髄腔に向かうにつれてラクトフェリン量は減少した。 以上の結果から,ラクトフェリンは歯根表層,特に歯石が付着している部位に分布していることが明らかになった。平成14年度では,ラクトフェリンが歯周組織,特に歯肉上皮,歯肉線維芽細胞に与える影響について検討する予定である。
|