天然にはフラン環が融合した多環系天然物が存在しており、抗菌、強心、protein tyrosine kinase阻害活性等の顕著な生物活性を示す事が知られている。さらに近年本天然物群のひとつが細胞分裂を阻害しない選択的な細胞膜融合阻害活性を示す事が新たに見いだされ、これまでに例のない新しいタイプの抗ウィルス剤としての可能性が示唆され、俄に注目されている。合成化学的見地からは、これら化合物に共通なフラン環が融合した多環系構造が挙げられる。 今回申請者らはこの特異なフラン融合多環系構造を一挙に構築可能な新規合成デザインとして、分子内にフラン構造を有するベンゾシクロブテンの熱的分子内[4+2]環化反応を計画し、その基質の合成を検討した結果、首尾よくその合成を達成した。さらに、鍵工程である分子内[4+2]環化反応を検討した結果、単一の環化成績体を高収率で得ることに成功した。
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