研究概要 |
九州沖縄に生息する海洋無脊椎動物約200種について、まず、マウスマクロファージ様細胞株(RAW264)を用いLPS刺激に対するTNFα産生抑制物質を探索した結果、沖縄県辺戸岬で採取したソフトコーラル(Sinularia sp.)より2種のノルセンブランジテルペンnorcembrenolide及びsinuleptolideを活性化合物として発見しこれらの研究成果をBiol.Pharm.Bull.誌に発表した。次にTNFα感受性マウス繊維芽細胞株(L929)を用い、細胞毒性阻害活性を指標にTNFα機能阻害剤の探索を行った結果、沖縄県瀬底島で採取したソフトコーラル(Sinularia flexibilis)より1種のセンブランジテルペンflexibilide(=sinularine)を発見し、新規医薬素材として非常に有望であると考え、(株)産学連携機構九州から特許出願を行った。次に、RAW264を用いたTNFα産生促進物質を探索した結果、福岡県小呂の島で採集した海綿(Amp himedon sp.)からTNFα産生促進物質として、5種の新規スフィンゴ糖脂質amphimelibioside類を単離し、第23回天然物国際会議(フィレンツェ、イタリア)において発表した。この研究成果については現在投稿準備中である。その他、TNFαが濃度に対応して、正あるいは負の調節因子として機能することが知られている血管新生阻害物質に関する研究成果として、福岡県津屋崎で採取したコケムシ(Watersipora subtorquata)の新規アントラチオフェンbryoanthrathiopheneをJ.Nat.Prod.誌に、沖縄県瀬底島で採取した海綿(Amphimedon paraviridis)のプリンアナログ1,3-dimethylisoguaniniumをChem.Pharm.Bull誌に発表した。また、TNFαがデスファクターの一として機能するアポトーシス誘導物質orostanalを福岡県小呂の島で採取した海綿(Stelletta hiwasaensis)より発見し、その製造法を含めて特許出願するとともに、Tetrahedron Lett.誌に発表した。その他、本研究の途上で発見した多剤耐性克服物質irciniasulfonic acidをTetrahedron Lett.誌に細胞毒性物質(-)-axinysseneをOrganic Lett.誌に発表した。
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