研究概要 |
北里研究所で見出された低毒性なIL-6活性阻害物質マジンドリンA(1),B(2)は、いずれも特異的な3a-ヒドロキシフロインドリン骨格にジケトシクロペンテン骨格がメチレン鎖で架橋した特徴的な構造を有しており、互いに2'位の立体異性体と推定されている。これまで培養ではごく微量しか得られないため、相対並びに絶対立体構造は未決定である。本化合物をエナンチオ選択的に合成するにあたって3a-ヒドロキシフロインドリンの立体制御、およびシクロペンテン環上の4級炭素の立体化学の制御が必要となる。そこで種々検討した結果、マジンドリン類のエナンチオ選択的な全合成を達成した。しかもマジンドリンA(1),B(2)の絶対構造を3aR,8aS,2'R,3aR,8aS,2'Sと決定した。 すなわち、4級炭素の立体を光学活性なβ-ヒドロキシエステル(3)の立体選択的なアルドール反応により構築した後、オレフィンメタセシス、1,4-付加反応を行いシクロペンテン環を構築した。これをアルデヒド(7)に変換後、インドリン(6)を還元的N-アルキル化でカップリングさせ、次にインドリンをインドールへ酸化して8へと導いた。最後に8をSharplessらの不斉エポキシ化反応に供したところ、一挙に3a-ヒドロキシフロインドリン環を立体選択的に構築しマジンドリンA(1)へと導くことができた。
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