有機合成化学的興味から計画したタキソール合成ルートの研究においては、Left-wingとRight-Wingモデル化合物のカップリング反応が進行する条件を見出し、生成物のタキサン骨格構築への変換を行ったが、TMS基が原因で予想外の反応が起こったため、その部分を除去し、pinacol couplingを行った。その結果、望まない化合物が主生成物となったが、所望の環化体を10%で得た。C-9、C-10位間でのpinacol couplingは収率が低く、pinacol couplingによる閉環反応を行うのであれば、他の位置が適切と思われる。また、cynohydrinによる分子内アルキル化反応は環化生成物を与えた。反応スケールが小さく、生成物の有意な収率を求められなかったものの、この反応においては副生成物がほとんど見られず、条件最適化により中程度の収率で環化体が得られると期待される。 タキソールの短工程合成を目指して計画した合成ルートの研究では、モデル化合物である2種類のketoaldehydeに対しpinacol couplingを行うと収率12%、20%(at91%conv.)で環化体が得られたが、二量体あるいは還元体が主であった。そこで、反応点を接近させる目的で、C-9、C-10位にアセトナイドをかけ、その効果を検討した結果、還元体が得られるのみであった。 A環部位のC11位炭素をsp^2混成からsp^3混成へ変化することにより、反応点を接近させることができると考え、その効果を検討したが、pinacol couplingでは全く環化体が得られなかった。 C-16あるいはC-17位に水酸基を導入した基質でpinacol couplingを行うと8員環形成に有利なendo boat-chair型遷移状態をとり得ると考え、現在検討中である。
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