研究概要 |
ポリ環状エーテル海洋天然毒には,神経毒性,下痢毒性,抗真菌活性など強力な生理活性を示すものが多く存在する。本研究では,食中毒の原因物質の一つとして毒化したホタテガイより単離された11環性のポリ環状エーテル構造を持つエッソトキシンの下痢毒性と構造との関連を解明する目的でその合成研究を実施した。本年度の研究においては,6員環ポリ環状エーテル骨格構築の原料となる新しい四炭素キラルビルディングブロックとしてのエリスルトール誘導体を考案した。エリスリトールは対称構造を有するため光学的に不活性であるが,位置選択的な保護基の導入により,両光学対称体の合成が可能であり,それらを安価なグルコース誘導体から大量かつ簡便に合成する方法を開発した。本原料を用いた対称型四置換テトラヒドロピラン誘導体の効率的合成法も確立した。この化合物を用いてエッソトキシンのBCDE環部の収束型合成を行った。同一の光学活性四置換テトラヒドロピラン誘導体から6員環のB環フラグメントおよび7員環のE環フラグメントを構築し,両フラグメントをアセチレンで連結したのちアセチレン部分を直接酸化して1,2-ジケトン誘導体に誘導した。これを酸処理して一挙にジヘミアセタール骨格を形成し,アセタール水酸基をメチル化後,トリエチルシランを用いる還元的エーテル化法でアセタール水酸基を除去することによって,エッソトキシンのBCDE環構造を構築することに成功した。
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