研究概要 |
新しい抗腫瘍性物質の発見を目的として,種々の海洋生物より分離した菌類から細胞増殖阻害物質を探索し,17種の新規化合物を単離し,これらの化学構造を決定した.また,抗腫瘍性物質ジムナスタチンAの類縁体を合成し,構造活性相関を検討した. 1.沖縄産クロナマコ由来放線菌(未同定)から細胞増殖阻害物質として3種の新規化合物(ハロデライドA-C)を単離し,これらの構造を推定した. 2.緑藻ボウアオノリ由来ペニシリウム属真菌から細胞増殖阻害物質として新たに5種の新規化合物(ペノカラシンD-H)を単離し,立体構造を決定した. 3.ムラサキウニ由来アスペルギルス属真菌から新たに2種の新規化合物(アンソカラリンG及びH)を単離し,これらの絶対立体構造を決定した.これらは緩やかな細胞増殖阻害活性を示した. 4.ダイダイイソカイメン由来ジムナセラ属真菌から細胞増殖阻害物質として新たに6種の新規化合物(ジムナスタチンL-N及びP,ジムナステロンG並びにダンカステロンB)を単離し,これらの立体構造を決定した.ダンカステロンBは,C環及びD環がそれぞれ5員環及び6員環の特異な構造のステロイドであり,他の生物活性にも興味がもたれる. 5.海水魚ヤナギベラ由来ストレプトマイセス属放線菌から細胞増殖阻害物質として1種の新規化合物(ハリコブレライド:分子量1036)を単離し,絶対立体構造を明らかにした. 6.ジムナスタチン類縁体(側鎖の炭素数2-4,6,8及び12)を合成した結果,側鎖が短いと細胞増殖阻害活性を弱めることが判明した. 7.すでに単離されていたジムナスタチンJ及びダンカステロンAは,ヒト癌細胞に対し強い増殖阻害活性を示すとともに新規作用機作をもつ可能性が示唆された.また,マクロスフェライドEは,血管内皮細胞(HUVEC)に対する癌細胞(HL-60)の接着を阻害し,その効果はハービマイシンより強いことが判明した.
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