研究概要 |
新しい抗腫瘍性物質の発見を目的として,種々の海洋生物由来菌類から細胞増殖阻害物質を探索し,8種の新規化合物を単離し,これらの化学構造を決定した.また,昨年度に引き続き,抗腫瘍性物質ジムナスタチンAの類縁体を合成し,構造活性相関を明らかにした. 1.沖縄産ラッパウニ由来アスペルギルス属真菌から2種の新規化合物(ピレオチンA及びB)を単離し,これらの立体構造を決定した. 2.ダイダイイソカイメン由来ジムナセラ属真菌から細胞増殖阻害物質として新たに5種の新規化合物(ジムナスタチンQ-U)を単離し,これらの立体構造を決定した. 3.アメフラシ由来ペリコニア属真菌から新たに新規物質セコマクロスフェライドEを単離し,これと立体化学が未解決であったマクロスフェライドC及びF-Hの絶対立体構造を決定した. 4.昨年度報告したジムナスタチン類縁体に加え,さらに数多くの誘導体を合成し,構造活性相関を検討した結果,P388細胞及びヒトがん細胞に対する細胞増殖阻害活性並びにチューブリン阻害活性の発現には,共役ジエノン及びスピロヘミアセタールの存在が重要であり,側鎖に関しては,各活性について炭素数6個,12個及び8個のときに最も強い効果を示すことが判明した.一方,プロテインキナーゼ阻害活性の発現には,ハロゲンをもつ共役ジエノン及びスピロヘミアセタールもしくはスピロラクトンの存在が重要であることが判明した. 5.すでに単離されていたハリコブレライドA及びレプトシンMは,いずれもヒトがん細胞に対し強い増殖阻害活性を示すとともに新規作用機作をもつ可能性が示唆された.また,レプトシンMについては,プロテインキナーゼ及びトポイソメラーゼに対し阻害活性が認められた.一方,マクロスフェライドF-H及びL並びにこれらから誘導された2種の化合物は,血管内皮細胞(HUVEC)に対する癌細胞(HL-60)の接着を阻害し,その効果はハービマイシンAより強いことが判明した.
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