研究概要 |
国民の3人に1人はアレルギー疾患にかかっているといわれている.特にI型アレルギーに属する花粉症,気管支喘息,アトピー性皮膚炎等の患者数が多く,これらの疾患の発症機序に,活性酸素種の関与が考えられている.そこで本研究では,活性酸素種消去を作用機序とする天然抗I型アレルギー物質の探索を目的として,メタノールエキスの抗酸化スクリーニングにおいて強い活性を示したハマゴウ(Vitex rotundifolia L.)果実ならびに食用人参(Daucus carota var.sativus)地上部のエキスの成分研究を行った. ハマゴウ果実からは新たに10種の新規ラブダン型ジテルペノイドを含む15種の化合物を単離,構造決定した.また,それらの化合物のうち,4種のフラボノイドにロダン鉄法による抗酸化試験を行い,3種に天然抗酸化物質のα-tocopherolよりも強い活性を確認した.さらに,DPPH消去活性試験では,4種のフラボノイドは共に弱いラジカルスカベンジング効果しか示さなかったが,これまでのデータとの比較から,本効果発現におけるフラボノイド骨格のB環のカテコール構造の重要性が示唆された.また,2種のフラボノイドに実施したヒアルロニダーゼ活性阻害試験では,強い活性は見られなかった.一方,人参地上部からは5種の化合物を得,構造を明らかにすると共に,それらのうち4種にロダン鉄法を行い,3種に合成抗酸化物質のBHAよりも強い活性を見出した.また,DPPH消去活性試験では,1種にα-tocopherolと同程度,1種にその約2倍の活性が見られた.尚,両化合物はカテコール構造を有する.さらに,ヒアルロニダーゼ活性阻害試験で,先の2種の化合物に抗アレルギー剤のDSCGの約1/5の活性が確認された.このことから,カテコール基は,本阻害活性発現における重要な官能基の一つと推定された.
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