研究概要 |
現在注目されている脳内物質としてニューロステロイドがあり,そのなかでもdehydroepiandrosterone3-sulfateやpregnenolone 3-sulfateなどの硫酸抱合型ニューロステロイドに第4世代の神経伝達物質として多大な関心が寄せられている. 先に我々はLC/MSによるこれらの分析法を開発し実試料へ適用したところ,いずれの抱合体の存在量もLC/MSの検出下限以下であり,従来の文献値より遥かに低値(1/20以下)を示すことから,本法では測定困難なことが判明した.そこで,これらの特徴的官能基(3位サルフェート,17あるいは20位のケトン)から大きく離れた11位に着目,ここにブリッジを導入した新規ハプテンを合成し,極めて特異性の高い抗体を得た.ついで,それを基に簡便で信頼性の高い超高感度な酵素免疫測定法(ELISA)を開発した.なお,これはブリッジヘテロロガス法と遅延添加法を駆使した測定法である.開発した方法を実試料(ラット脳;部位別)へ適用したところ,いずれの抱合体も先に得られたLC/MSによる知見と同様に低濃度であり,血中濃度より低い場合も見られた. 以上のようにして開発したELISAはいずれも超高感度で高選択的であったが,実試料においては従来法による値より遥かに低値しか得らなかった.この原因は一概には論じられないが,脳神経化学領域において今後解明すべき大きな課題と考えられる.すなわち,ニューロステロイドの定義である脳内で独自に生合成され脳内に蓄積されるのではなく,単に血液中のそれが脳内に移行しているだけとも考えられた.
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