研究課題
単細胞緑藻の光感覚受容体に関し、今年度は劇的な展開が見られた。独のHegemannらがクラミドモナスの走光性受容体の候補としたクラミオプシンはロドプシン類との相同性に乏しい。ところが、我々は既に生理学的解析から発色団の立体構造は古細菌型ロドプシンのものと等しく、また同様な光異性化を行なうことを示している。クラミオプシン以外の候補分子が存在するか否かは、これまで謎であった。今年度、古細菌型ロドプシンのへリックスC、F、Gとの相同性を指標にかずさDNA研のクラミドモナスESTデータベースを検索すると、該当するアミノ酸配列をコードする塩基配列を見い出すことができた。昨年10月には別の相同なタンパクをコードするESTクローンも登録されたので、それぞれの全長の塩基配列を決定し、それぞれをAcop-1(Archaeal-type Chlamydomonas Opsin-1)、Acop-2と名付けた。Acop-1、Acop-2はML法、NJ法による系統解析では古細菌の光センサー分子sR-1、pRの近傍にクラスタを作り、昨年報告された海洋細菌のプロテオロドプシンとも近縁で、アカパンカビのNop-1とは比較的遠い。また、両者はともに、古細菌型ロドプシンと相同な膜貫通領域の更にC末側に、約400残基の大きな(細胞質側?)ドメインを含み、ヘリックスBが酸性残基に富む、という既知のロドプシンにない特徴をもつ。今後の課題はAcop-1、Acop-2が走光性と関わりをもつことの確証である。蛍光抗体法で局在を、antisenseDNAの導入で走光性感度の減少を確かめることを計画している。
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