肥満細胞からのヒスタミン等の放出によって即時型アレルギーが惹起される。この放出には細胞外からのCaイオン流入が不可欠であるが、Caチャネルの実体は不明である。我々はその実体の候補としてTRPチャネルが肥満細胞に発現していることを突き止め、平成12年度には、TRPチャネルのドミナントネガティブ株、及び非発現株の作成に成功した。平成13年度は、これらの細胞株を用いて、カルシウム測定を行い、肥満細胞におけるTRPチャネルの役割を検討した。 (1)TRPのドミナントネガティブ、アンチセンス株のカルシウム動態 ドミナントネガティブ株、アンチセンス法による非発現株のどちらにおいても、抗原刺激によるカルシウム動態に変化は見られなかった。従って、TRPチャネルは肥満細胞に発現はしているが、抗原刺激に伴なうカルシウム濃度上昇には関与していないことが示唆された。従って、TRP以外にチャネルが関与していることになる。そこで、肥満細胞のカルシウムチャネルの性質を深追究するために、ハプテン添加によるカルシウムチャネルの阻害機構の研究を行った。 (2)ハブテン投与によるカルシウム濃度変化 肥満細胞多価抗原によってIgE受容体が架橋されることによって活性化されるが、1価の抗原(ハプテン)を多量に加えることで、架橋が解除され、その結果カルシウムチャネルが阻害され、細胞内カルシウム濃度が低下する。そこで、RBL-2H3細胞において、ハプテンの作用を調べた結果、ハプテン添加によって確かに多価抗原によるカルシウム濃度上昇は抑制されるが、タプシガルギンによるカルシウム濃度上昇は阻害されなかった。このことは抗原刺激によって活性化されるカルシウムストア枯渇依存性のカルシウムチャネルとタプシガルギンによって活性化されるストア枯渇依存性のカルシウムチャネルとでは、活性化経路が異なる可能性があることが示唆された。
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