肥満細胞からのヒスタミン等の放出によって即時型アレルギーが惹起される。この放出には細胞外からのCaイオン流入が不可欠であるが、このCa流入を媒介するCaチャネルの実体は明らかになっていない。ただし、細胞内のカルシウムストアの枯渇によって活性化されることは知られている。我々はその候補としてtrp遺伝子がコードするチャネル蛋白質(TRPチャネル)が肥満細胞に発現していることを突き止めた。本研究では、TRPチャネルの肥満細胞における役割を追究した。 (1)TRPの発現及び能低下株のカルシウム動態 アンチセンス法及びTRPのN末側TRPの導入によって、TRP1の発現を抑えた株(ノックダウン株)とTRPの機能を抑制した株(ドミナントネガティブ株)を得た。これらノックダウン株及びドミナントネガティブ株において、抗原刺激に伴なう細胞内カルシウム濃度変化を測定したところ、コントロールの野生株と比較して、特にカルシウム動態に変化は見られなかった。これらのことは、TRP1が肥満細胞の抗原刺激に伴なうカルシウム流入に関わっていないことを示唆した。そこで、肥満細胞のカルシウムチャネルの活性化機構を追究するために、ハプテンおよびIP3受容体の阻害剤の効果を調べた。 (2)ハプテン及びIP_3受容体阻害剤の効果 肥満細胞は多価抗原がIgE受容体を架橋することによって活性化するが、この架橋を1価のハプテン抗原で解除すると、細胞外からのカルシウム流入が阻害される。そこで、細胞内カルシウムストアをタプシガルギンで枯渇させた際のハプテンの効果を調べた。その結果、タプシガルギンによるカルシウム流入はハプテンでは阻害されないことが示された。また、IP_3受容体の阻害剤xestospongin Cの効果を調べた結果、カルシウムストア枯渇によって活性化されるカルシウムチャネルを阻害することが明らかとなった。
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