研究概要 |
応答曲面法(response surface method, RSM)における要因-特性間の相関モデル作成プロセスに人工ニューラルネットワーク(ANN)を適用する新規多目的同時最適化法を開発した.従来のRSMでは相関モデルとして2次多項式が用いられているが,実際製剤の処方設計・最適化に適用する場合,多項式では予測精度が低く最適解の信頼性が著しく損なわれることがある.ANNを利用することにより,要因-特性間の非線形性を高精度に近似できるため,結果として最適解の信頼性を実用に耐えるレベルまで向上させることができた.一方,ANNの問題点として過学習や学習不足が起こり易く,データに対して最適なANN構造の選択が重要な課題である.このような問題点の解決を目的として,過去の事例をもとに種々の数値実験を行い,分割型ANN,拡張Kalman filterアルゴリズム,simulated annealing technique,再構築学習法,leave-one-method,赤池情報量基準(AIC)等の計算技術および統計量を用いることにより,ANNの構造が最適化できることを明らかにした.また,製剤処方設計においては,複数の製剤特性を同時に最適化することが要求される.そこで標準化ユークリッド距離による特性の統合法を開発し,さらに最適解に処方設計者の意思を導入する方法について詳細な検討を加えた.その結果,処方設計者との対話を通じて最適解を探索する方法を開発し,実用性に優れる意思決定支援システムを構築することができた.本研究により開発された一連の最適化法を利用し,吸収促進剤として1-O-ethyl-3-n-butylcyclohexanol(OEBC)を含有するketoprofen hydrogelの処方最適化を実施した.その結果,ketoprofenの経皮吸収性に優れ,皮膚刺激作用の少ないhydrogelの作成条件が見出された.吸収促進活性と皮膚刺激性の予測値は実測値と高精度に一致し,本研究で開発した最適化法の有用性が確認された.
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