研究概要 |
ペプチド性医薬品の効率的な生体内送達を実現すべく,申請者らが独自に開発した気中懸濁被覆法によるマイクロカプセル(MC)化技術および刺激応答性高分子ゲルを含む種々のポリマーのナノサイズ化技術により,以下の素材および製剤化検討を実施した。 1.長時間遅延放出型MC:前年度試作したインスリン含有MCについて,長期保存安定性の検討を実施した。HPLC分析によるデスアミド体の生成を指標としてインスリン安定性を評価した結果,4-10℃の冷蔵保存環境下では,1年間の長期にわたって内包インスリンの90%以上がインタクトな状態で維持されることが分かった。また,この保存サンプルについてインスリン放出挙動の再現性を調べたところ,保存前のそれと比較して,ラグタイム後の放出速度が若干低下する傾向を示したものの,ラグタイムにはほとんど差異は認められなかった。 2.刺激応答性放出制御型MC:体温近傍での体積相転移による放出制御を可能にすべく,新たにN-isopropylacrylamide,N,N-dimethyl acrylamide,n-butylacrylateの三元共重合体からなる感温性p(NIPAAm-DMA-BMA)ナノ粒子を合成し,これを含有する温度応答性MCの調製を試みた。37℃⇔42℃にて繰り返し温度変化を与えた場合,p(NIPAAm)のみからなるナノ粒子の場合に比べて,放出の温度応答性が明確で鋭敏なオンオフ型の正のパルス放出を示すことがわかった。 3.MC用素材の開発:前年度検討のポリ(ε-カプロラクトン)擬ラテックスについては,処方の抜本的見直しを図ることで課題であった高分子収率の改善に成功し,キャスティングあるいは水系コーティング操作によって均質な被膜を形成したが,水溶性添加剤を含むため薬物の拡散障壁としての働きに乏しく,処方の更なる改良を要した。
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