人工抗体(粒子径単分散分子インプリントポリマー)の調製は、テンプレート分子としてナプロキセンを用いた場合、機能性モノマーとして4-ビニルピリジンを、テンプレート分子としてプロプラノロールを用いた場合、機能性モノマーとしてメタクリル酸を用い、多段階膨潤重合法により行った。また、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート、希釈剤としてトルエンを用いた。重合は、アゾビスジメチルバレロニトリルを開始剤として用い、50℃で行った。表面親水化は、重合開始4時間後に過硫酸カリウム、グリセリンモノメタクリレート(GMMA)およびグリセリンジメタクリレート(GDMA)を70℃で添加して行い、添加するGMMAおよびGDMAの割合を変化させて行った。GMMA : GDMA=5:5において、牛血清アルブミンの回収率はほぼ100%であった。表面親水化を行った充填剤は、表面親水化を行わない充填剤と比較して、種々の化合物の保持時間が短くなる傾向を示したが、テンプレート分子は選択的に保持された。これらのことから、表面修飾によって粒子表面が選択的に親水化されていることが明らかとなった。微量の薬物の分析においては、テンプレート分子のポリマーからの漏出がおこり、微量の薬物の分析には適用できなかった。そこで、ナプロキセンをインプリントしたポリマーを用いて、イブプロフェンの選択的濃縮を、プロプラノロールをインプリントしたポリマーを用いて、β-ブロッカーであるアテノロール、アルプレノロール、ピンドロールの選択的濃縮を検討した。表面親水化だけを行ったポリマーでは、これらの薬物は前処理カラムに保持されずに溶出したが、表面親水化を行った分子インプリントポリマーでは選択的な濃縮が可能であった。微量の生体試料中の薬物および代謝物の高感度・高選択的分析法としての本法の有用性が明らかとなった。
|