研究概要 |
(1)先天性代謝異常症の一種であるグルタル酸尿症のマススクリーニング及びその精査には、尿や血液中のジカルボン酸類の高感度、高選択的かつ迅速な計測法が必須である。まず、エキシマー誘導体化に基づくジカルボン酸の計測法を開発した。本法は、ピレン試薬[4-(1-ピレン)ブタン酸ヒドラジド(PBH)]が、ジカルボン酸の2個のカルボキシル基に導入され、この2個のピレン分子がエキシマーを形成し、これから長波長のエキシマー蛍光を発することに基づく。マススクリーニングとしての分光法、精査法としてのHPLC法を開発した。 (2)方法 尿試料をDMSOで10倍希釈し、孔径0.45μmのフィルターで濾過する。希釈尿200μLに0.2M EDC(水溶性カルボジイミド)100μL、40%ピリジン(DMSO溶液)100μL及びPBH(DMSO溶液)を加え、40℃で60分間加温する。 分光法:誘導体化後、反応液を1000倍に希釈し、励起波長345nmにおける蛍光スペクトルを測定する。 HPLC法:誘導体化後の反応液を移動相で10倍に希釈した液をHPLCに注入(20μL)し、各ジカルボン酸の分別定量を行う。HPLC条件:カラム:YMC-Pack ODS-AM(250x4.6mm I.D.,粒径5μm)、移動相:67%(v/v)アセトニトリル、流速:1.0mL/min、蛍光検出:励起波長345nm、蛍光波長475nm。 (3)結果、考察及び今後の方針 エキシマー蛍光誘導体化法は、ジカルボン酸に極めて特異的で、生体中に大量存在するモノカルボン酸の妨害を受けることなく、高感度にジカルボン酸を計測できる。本法により、尿や血液中のジカルボン酸を高感度、高選択的かつ簡易に計測することが可能となった。現在、本法をグルタル酸血漿患者の尿や血液に適用し、本法の有用性を確認しつつある。また、本法を用いて、グルタル酸尿症の病態研究も実施する。
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