ナチュラルキラー(NK)細胞は、活性化レセプターならびに抑制性レセプターを用いて標的細胞の認識を行う。しかしながら、活性化レセプターについては未知の点が多い。本研究では、リガンドが明らかにされていないいわゆるオーファントレセプターであるNK細胞活性化レセプターNKR-P1ならびにNKp46についてそのリガンドを明らかにすることを目的として研究を行った。 NKR-P1ならびにNKp46について、細胞外領域を大腸菌で発現後、試験管内でリフォールディングを行い、可溶型レセプターを作成することに成功した。このうち、可溶型(s)NKR-P1について50種類以上の培養細胞株におけるNKR-P1リガンドの発現を検索したところ、あるBリンホーマ細胞株にのみsNKR-P1が結合し、NKR-P1リガンドを発現しているものと考えられた。この細胞上のNKR-P1リガンドの性状を明らかにするため、sNKR-P1の細胞への結合を阻害する抗NKR-P1リガンド抗体H19を作製した。H19抗体が認識する分子を免疫沈降法で解析したところ、Bリンホーマ上のNKR-P1リガンドは膜型IgMであることが明らかになった。また、sNKR-P1はこのBリンホーマ細胞の他、マウスB細胞のうち先天性免疫を担うとされるB1B細胞の一部に結合した。今回の発見により、NK細胞とB1B細胞という先天性免疫を担う2つのリンパ球集団の間に予期しなかったネットワークが存在する可能性が示唆された。今後、今回の発見の生理的意義を解明することが必要とされる。また、NKp46について可溶型レセプターが作製されたことにより、今後のリガンド探索の基盤が確立できた。
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