研究課題/領域番号 |
12672109
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小林 哲幸 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (50178323)
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研究分担者 |
室伏 きみ子 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00103557)
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キーワード | ストレス応答 / ストレスタンパク質 / Hsp / コレステロール / ステロール配糖体 / ステリルグルコシド / 抗潰瘍作用 / コレステリルグルコシド |
研究概要 |
本研究では、細胞外ストレスを最初に感知する場である細胞膜に着目し、ストレス応答に関与する新規の脂質性メディエーター分子、特にコレステリルグルコシド(CG)の細胞生化学的解析を行った。本年度は、当初交付申請書に記載した、以下の3項目について検討し、新たな知見を得ることができた。 1.種々の培養細胞や臓器・組織におけるCG誘導の解析:ラットの各臓器・組織由来のCG様物質について、その構造を質量分析により解析した結果、CGであることが確認された。さらに、ラットに酸化ストレスや寒冷拘束ストレスを負荷すると、ストレス依存的にCGが増加した。また、ラット由来の初代培養胃粘膜細胞に熱ストレスを与えた場合にも、CGの蓄積が誘導された。以上より、ストレス依存的にCGが細胞内で誘導されることが、動物個体in vivoにおいても確認された。 2.CGの抗胃潰瘍作用の解析:ラットにCGを経口投与し、胃潰瘍形成モデルである寒冷拘束ストレスを与えた。その結果、対照群に比べてCG投与群は顕著な抗潰瘍作用が観測された。その際に、CGが胃粘膜細胞内のHSFを活性化してHspを誘導することが確認された。したがって、CGは胃粘膜細胞にHspを誘導することにより細胞を保護し、抗潰瘍作用を発揮することが明らかとなった。 3.CG生合成酵素の解析:植物や酵母で報告のあるglucosyltransferase遺伝子のDNA配列情報をもとに、degenerate PCR法によりヒトのCG合成酵素遺伝子のクローニングを試みた。また、mRNAを鋳型とするRT-PCR法によっても試みた。しかし、現在までのところ目的とする遺伝子が見つかっていない。動物におけるCG合成酵素が、植物や酵母のそれとは大きく異なっている可能性も考えられ、酵素精製や発現クローニングなどの方法を用いて、さらなる検討を行っている。
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