【目的】老化の一因として、酸化ストレスによる障害の蓄積が考えられている。加齢に伴う脳萎縮、学習記憶能の低下等の特徴を示す老化促進モデルマウス(SAMP10)を用い、抗酸化作用が報告されている緑茶カテキンについて、学習記憶能に対する効果および脳萎縮および酸化障害に対する作用について検討した。 【方法】老化促進モデルマウス(SAMP10)および対照マウス(SAMR1)について、生後1月齢から6月齢および12月齢まで、緑茶カテキン(ポリフェノン70S)を含む水を自由摂取させた。コントロールは通常の水を摂取させた。各月齢のマウスについて脳湿重量の測定、肝臓および脳のDNAについて酸化ストレスの指標である8-oxodeoxyguanosine(8-oxodG)量の測定を行った。 学習判定には、マウスが暗い所を好む性質を利用し、明室から暗室に移動すると電気ショックが与えられることを学習させる、受動回避テストを行い、この学習に要する時間および回数を測定した。また迷路を使った実験では、マウスの自発的な探索行動を観察し、空間作業記憶について測定を行った。 【結果】緑茶カテキンを摂取した12月齢のSAMP10において、通常の水を摂取したマウスに比べ、学習に要する時間増加が有意に抑制され、記憶能の低下も有意に抑制された。また大脳の萎縮の程度と学習能の低下との間に相関性がみられたことから、神経細胞の脱落等が生じているものと考えられるが、緑茶カテキン摂取により、加齢による脳の萎縮は抑制されることが見いだされた。また、緑茶カテキンの摂取により、6月齢の嗅脳および12月齢の肝臓でDNA酸化障害の有意な低下が見られた。加齢に伴う酸化障害の増加は、脳に比べ肝臓で顕著であることが示された。 【総括】これらのことから緑茶カテキンの摂取は、体内の酸化ストレス抑制に寄与しているものと考えられ、加齢に伴う学習・記憶能の低下を抑制する効果があることが明らかとなった。
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