【目的】老化の一因として、酸化ストレスによる障害の蓄積が考えられている。寿命の短縮、脳機能低下の特徴を示す老化促進モデルマウス(SAMP10)を用い、ストレス蛋白質の抗老化機能を検討するとともに、抗酸化作用が報告されている緑茶カテキンを用い、脳機能ならびにがんの増殖・転移に対する酸化障害について検討する。 【方法】SAMP10について、生後1月齢から12月齢まで緑茶カテキン(ポリフェノン70S)を含む水を自由摂取させた。マウス脳湿重量の測定、ストレス蛋白質の脳内での発現変化、DNAの酸化ストレスの指標である8-oxpodeoxyguanosine (8-oxodG量の測定を行った。学習判定にはマウスが暗い所を好む性質を利用した受動回避テスト、迷路を使った空間作業記憶の測定を行った。酸化修飾蛋白質の検出、がん増殖に対する延命効果、転移がんコロニー数の測定を行った。 【結果】SAMP10の脳内ではストレス蛋白質(Hsc70)が増加し、酸化ストレスにより脳内で変性蛋白質が増加している可能性が示唆された。脳機能については、緑茶カテキン摂取により老齢SAMP10において、学習・記憶能の低下が有意に抑制され、脳の萎縮も抑制されることが見いだされた。また、嗅脳および肝臓でDNA酸化障害の有意な低下が見られたが、加齢に伴う酸化障害の増加は、脳に比べ肝臓で顕著であることが示された。 【総括ならびに今後の展望】生体内の酸化ストレスを抑制することにより、加齢に伴う脳機能の低下を抑制できることが明らかとなった。ストレス蛋白質の機能ならびに酸化障害のターゲットを更に明らかにするため、脳内蛋白質における変化、移植・転移がんに対する緑茶カテキンの効果について現在実験を進めている。
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