(1)ラット用高解像度デジタル眼底カメラの製作とデータ解析システムの構築:スカラー製小動物眼底撮影用ビデオカメラの対物レンズ(Scalar VMS)とニコン製一般消費者向けデジタル・スチルカメラ(D1またはD1x)とを組合わせることにより、安価に高解像度のラット用眼底カメラを製作した。両者は規格・特性が異なるため、調整用光学系及び眼底照明用光源を内蔵する接続用チューブを自作した。デジタルカメラを介して得られた画像はハードディスク上に記録した。血管径は、画像処理用及び画像解析用ソフトウェアを使って算出した。本装置を用いることにより非常に明瞭なラットのデジタル眼底像を取得することが可能となり、網膜血管径を1μmに近い分解能で測定できるようになった。 (2)糖尿病ラットにおける網膜動静脈の薬物反応性変化及びその機序に関する検討:ストレプトゾトシンを投与することで糖尿病ラットを作製し、糖尿病発症後1〜12週の間に実験を行って、1)経時的な網膜血管の薬物反応性の変化と、2)目視及び組織化学的観察所見との関連性を検討した。薬物反応性の変化は、各種血管拡張薬及び血管収縮薬(アドレナリン作動薬、アンジオテンシン、セロトニン、ニトロ血管拡張薬、カルシウム拮抗薬等)で引き起こされる反応観察することにより検討したが、中でもアドレナリンβ受容体を介する弛緩反応に顕著な反応性の低下が現れることが明らかとなった。 (3)高血圧ラットにおける網膜動静脈の薬物反応性変化及びその機序に関する検討:SHR-SPにおける検討を行った。SHR-SPは、生後の発達に伴って血圧が急上昇するが、それに伴って、網膜細動脈の収縮亢進に起因する顕著な血管径の狭細化が認められた。その原因として、L型Caチャネルを介した細胞外からのCa^<2+>の流入促進と、Rho kinaseの活性化に基づく血管平滑筋細胞内Ca^<2+>感受性の増大が示唆された。
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