昨年度に引き続き、放線菌が生産する抗HIV蛋白質actinohivin(AH)の分子構造と活性との関係を解明し、新しい低分子抗HIV薬の創製のための基盤研究を実施し、本年度下記の成果を得た。 昨年度確立した組換えAHの大腸菌による生産およびアフィニティーカラムクロマトグラフィーを用いた精製方法を改良し、大腸菌ペリプラズム画分にAHを蓄積させる方法を検討した。すなわち、AH遺伝子PelBシグナルペプチドの下流にin frameで連結したAH発現ベクターを構築した。大腸菌BL21で生産された組換えAHはペリプラズム画分に検出されたがその分子量は放線菌由来のAHより小さかった。今回構築した発現系で生産されたAH前駆体はシグナルペプチダーゼ認識部位とは異なったところでプロセッシングされているものと考えられた。 AHは分子内に互いにきわめて相同性の高い3つのセグメントで構成されている。そこで1ないしは2つのセグメントで構成される6種類の欠失変異体を作成して合胞体形成阻害活性を調べたところ、いずれの欠失体もAHに比べて著しく活性が低下した。この結果より、AHの合胞体形成阻害活性には3つのセグメントが必須であると考えられた。一方、セグメント2にある2ヶ所のシステイン残基をセリン残基に置換した変異体はAHと同等の阻害活性を示したことから、システイン残基はAHの活性には影響しないものと考えられた。 AHはその構造の特徴からcarbohydrate binding module family13に属すたんぱく質であると考えられる。また、AHはHIV表面蛋白質gp120の糖鎖を認識していることが明らかとなった(未発表)。今後、AHとgp120の相互作用に関与するアミノ酸残基を同定し、両分子の結合様式を明らかにされることが期待される。
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