放線菌が生産する抗HIVペプチドactinohivin(AH)の構造と活性の関係を明らかにし、新しい低分子抗HIV薬創製の基盤を得ることを目的として本研究を実施し、以下の結果を得た。。 AH生産菌よりクローン化されたAH遺伝子を大腸菌発現ベクターpET30Xa/LICとin frameで連結してAH発現プラスミドを構築した。このプラスミドで形質転換した大腸菌BL21(DE3)plysSは約20mg/Lの組換えAH融合蛋白質を生産した。次に、組換えAHの精製法を検討し、組換えAH融合蛋白質をNiキレートカラムおよび逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、プロテアーゼfactor Xaで消化して組換えAHを切り出し、これを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する方法を確立した。この方法で得られた組換えAHは放線菌由来AHと同等の合胞体形成阻害活性を示した。 AHは分子内に互いにきわめて相同性の高い3つのセグメントで構成されている。そこで1ないしは2つのセグメントで構成される6種類の欠失変異体を作成して合胞体形成阻害活性を調べたところ、いずれの欠失体もAHに比べて著しく活性が低下した。この結果より、AHの合胞体形成阻害活性には3つのセグメントが必須であると考えられた。一方、セグメント2にある2ヶ所のシステイン残基をセリン残基に置換した変異体はAHと同等の阻害活性を示したことから、システイン残基はAHの活性には影響しないものと考えられた。 AHはその構造の特徴からcarbohydrate binding module family13に属すたんぱく質であると考えられる。また、AHはHIV表面蛋白質gp120の糖鎖を認識していることが明らかとなった(未発表)。今後、AHとgp120の相互作用に関与するアミノ酸残基を同定し、両分子の結合様式を明らかにされることが期待される。
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