研究概要 |
アポートシスに至るシグナル伝達機構の解析は正常ならびにがん細胞増殖制御の重要な課題であり,我々はこれまで単球と内皮細胞や腫瘍細胞と接着によるサイトカイン産生やアポートシス誘導を見い出し,その関与分子を明らかにしてきた.我々はすでに,酸化ストレスや抗がん剤によるアポートシスの誘導の際,接着斑キナーゼp125FAKがチロシンリン酸化されることを見い出し,この分子が抗アポートシス作用に重要な役割を持つことを明らかにしてきた(Sonoda ら,J Biol Chem 1999). 本年度は,1.FAKの抗アポトシース経路の1つとして,FAKからAkt/PKB→NF-kB活性化→アポトーシス誘導阻止因子(LAP)ファミリー誘導の経路もあることを,ヒトグリオーマT98G細胞系で見い出した.2.さらに,FAKの抗アポートシスにおける役割を明らかにするために,FAK関連遺伝子の過剰発現系の樹立が必須と考え,解析をめざした.本来,FAK発現はほとんどみられないHL-60にFAK遺伝子を導入して,安定導入株を得ると共に,アデノウイルスベクター(FAK-AxCA)を構築して,T98G細胞での高発現系を作成した.3.FAK高発現系でのアポトーシス耐性を検討したところ,酸化ストレス(過酸化水素〜1mM)や抗がん剤(エトポシド)によるアポートシスに高度耐性を示すことがわかった(Sonodaら,JBiol Chem2000).4.一方,Y397F変異FAK遺伝子を導入することにより,逆にアポトーシスを誘導することが分かり,397チロシン残基の重要性を指摘した。 以上のような,アポトーシス耐性機序の解析は,がん化学療法で問題となる薬剤耐性機構を明らかにする上でも極めて重要であると考える.
|