研究概要 |
膜結合性酵素であるPAF合成酵素(AAG-CPT)をブタ脾臓ミクロソームからジギトニンを使って安定に可溶化した。可溶化酵素(440kDa)を出発原料とし、本年度は次のような蛋白精製実験を行った。 1.CDPコリンアフィニティ-カラムクロマトグラフィー:CDPコリンをC10個程の炭素鎖を介してSepharoseに結合した。AAG-CPTのカラム吸着は使用した界面活性剤の種類(分子構造)により制限を受け、又、一度カラム表面に吸着するとNaClなどで溶出しても酵素活性は元に戻らないことが判明した。吸着によりAAG-CPTが不可逆的な立体構造の変化を受けるためと思われる。これに代わる方法として充填剤の表面を分子構造の柔かい高分子陰イオンで覆ったSoft Surfaceカラムを考案した。 2.ネイティブ ジギトニンカラム電気泳動:分子量が440kDaという大きな蛋白に対しては、通常のポリアクリルアミドゲルによる電気泳動は不可能である。ゲル濾過カラム充填剤(Sephacryl1000,分画分子量:500-100,000kDa)を使った泳動法を作製した。ジギトニン中、酵素活性を電気泳動により部分的に精製することができた。しかしながら、室温できわめて安定な本酵素も電流に曝されると活性は不安定となり、長時間の電気泳動による精製は不可能であった。 3.AAG光ラベル剤の合成とそれを用いたAAG-CPTの特異的放射標識化:AAGの長鎖の炭素鎖の先端にアジド化合物を共有結合で結合させたラベル剤を合成した。これはAAGと同じく、酵素活性部位に結合し、光ラベル剤の放射性PAFが生成されることを確認した。それ故、光照射により、酵素が放射標識されることが期待される。予備実験によると、実際、蛋白は標識化されており、現在は標識された蛋白の収量を高める為の条件を探索している。
|