主に中枢性降圧薬として臨床使用されているクロニジンは脳幹部のα_2アドレナリン受容体へ働き中枢性の降圧作用を示すとされてきたが、クロニジンがイミダゾリン受容体へも結合することが1980年代後半より明らかになった。本研究においては運動系と痛覚系におけるイミダゾリン受容体の役割を明らかにすることを目的とした。 1.臨床使用されているチザニジンの筋弛緩作用は、従来考えられていたα_2アドレナリン受容体ではなくイミダゾリン受容体への作用によることがラットを用いた脊髄反射電位測定と行動レベルの実験により示された(平成12年度、13年度)。 2.ddY系のマウスではチザニジンは筋弛緩を生じないので、チザニジンが筋弛緩を生じるマウスの系を探索した。調べた5種類の中でC57BL/6が筋弛緩を生じることを見出した。この筋弛緩作用にイミダゾリン受容体が関与することが示唆された(平成13年度)。 3.クロニジンの鎮痛作用におけるイミダゾリン受容体の関与について探索した。クロニジンは熱刺激と機械刺激試験において鎮痛効果を示した。熱刺激試験における鎮痛作用の一部はα_2アドレナリン受容体刺激作用によっては説明できず、イミダゾリン受容体関与であることが示唆された(平成14年度)。 イミダゾリン受容体はI_1、I_2、I_3のタイプがあるので、今後は上述の機能との関連を明らかにする必要がある。これらのタイプに選択的な薬物が利用可能となれば、イミダゾリン受容体の生体機能における役割、疾患との関連が明らかとなり、疾患治療に役立つことが期待される。
|