我々はこれまでに、アポトーシスの実行過程の顕著な特徴であるDNAのヌクレオソーム単位での断片化を司るエンドヌクレアーゼを完全精製することに成功し、これをDNase_γと命名した。DNase_γは中性領域に至適pHをもつCa^<2+>/Mg^<2+>-依存性、Zn^<2+>によって阻害される新規な酵素であり、現在ヒト、ラット、マウス、及びアフリカツメガエル由来のDNase_γ cDNAクローンの単離にも成功している。 DNase_γノックアウトマウスの作製を行うため我々は、まずマウスDNase_γ cDNAをプローブに用い、マウスゲノムライブラリーのスクリーニングを行い約18kbpのゲノムクローンの単離に成功した。得られたクローンの塩基配列を解析したところ、本クローンはDNase_γのC末端側5つのエキソンをコードするゲノム断片であることが分かった。今回得られたDNase_γゲノムクローンはN末端側約1/3のコーディング領域を欠いており全長のDNase_γ遺伝子を含むものではない。しかし、DNase_γの活性中心であるHis135が存在するエキソン領域は含まれており、さらに相同組み換えに十分な長さを持っていた。 そこで、得られたゲノムクローンを用いDNase_γ遺伝子のエキソン5をネオマイシンカセットで置換するターゲティングベクターを作製、ES細胞へのトランスフェクションを行った。当該細胞についてG418耐性クローンを選択、さらに正しく相同組み換えが起きている細胞をサザンブロット法により選択し、目的とするDNase_γ(+/-)ES細胞を得ることに成功した。 現在、本年度の研究により作製されたDNase_γ(+/-)ES細胞を用い、DNase_γノックアウトマウスの作製を行なっている。さらにDNase_γ遺伝子の破壊が致死である場合を考え、Cre-loxPシステムを用いたコンディショナルノックアウトマウスも同時に作製する予定である。ここで得られたDNase_γ欠損マウスの表現型を解析することにより、DNase_γの生理的役割が明らかになると期待される。また、アポトーシスの異常に起因する癌、自己免疫疾患、神経変性疾患などの新たなモデル系となることが期待され、新規な治療薬及び治療法を開発する上でも重要な意義を持つ。
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