我々はこれまでに、アポトーシスの実行過程の顕著な特徴であるDNAのヌクレオソーム単位での断片化を司るエンドヌクレアーゼを完全精製することに成功し、これをDNaseγと命名した。DNaseγは中性領域に至適pHをもつCa^<2+>/Mg^<2+>-依存性、Zn^<2+>によって阻害される新規な酵素であり、現在ヒト、ラット、マウス、及びアフリカツメガエル由来のDNaseγcDNAクローンの単離にも成功している。 DNaseγ欠損の影響を個体レベルで解析するためDNaseγノックアウトマウスの作製に着手し、昨年度の成果としてDNaseγ遺伝子の酵素活性中心をコードする配列を含むエキソン5をネオマイシンカセットで置換するターゲティングベクターを作製した。さらにES細胞へノックアウトコンストラクトを導入し、G418によるpositive selection及びGancyclovirによるnegative selectionを行った後に生き残ったES-colonyをピックアップした。growthしてきたES細胞よりそれぞれDNAを抽出、Southern解析によって相同組換え(+/-)が起こっていることを確認した。以下、定法に従い得られたヘテロ変異体のES細胞を胚盤胞へマイクロインジェクシヨンしキメラマウスを作製、その後C57BL/6と交配した。 以上の結果、germline transmissionを確認しヘテロ変異体マウスを経てホモ変異体マウスを樹立することに成功した。現在当該マウスを用いDNaseγの生理機能について、胸腺におけるT細胞のネガティブセレクションや脾臓におけるB細胞のクローナルデリーションに異常はないか、またクラススイッチリコンビネーションに異常はないか、などの免疫系の面から詳細に解析を行ってい。また、アポトーシスの異常に起因する癌、自己免疫疾患、神経変性疾患などの新たなモデル系となることが期待され、新規な治療薬及び治療法を開発する上でも重要な意義を持つと考えられる。
|