これまで我々は、ヒト・アストロサイトーマ細胞を用い、アゴニスト刺激に伴うGq蛋白質共役型ヒスタミンH_1受容体の細胞内移行について解析した。その結果、(1)ヒスタミンH_1受容体をヒスタミンで刺激すると、受容体刺激に伴い活性化されたCa^<2+>/カルモジュリンが受容体の細胞内移行を阻害し、そのため受容体は細胞内Ca^<2+>濃度変化に呼応した形で細胞表面に維持されること、(2)このCa^<2+>/カルモジュリンによる細胞内移行抑制機構には、カルモジュリン依存性燐酸化/脱燐酸化酵素であるCaMキナーゼII/カルシニューリンは関与していないことが明らかとなった。当該年度は、ヒスタミンH_1受容体機能の調節機構に注目し、特に、アゴニスト刺激に伴うヒスタミンH_1受容体の親和性変化とその分子機構を解析した。その結果、(1)ヒスタミンH_1受容体にはヒスタミンに対して高親和性及び低親和性の少なくとも二種類の結合部位(状態)が存在すること、(2)ヒスタミン刺激に伴い高親和性結合部位は低親和性結合部位に変換されること、(3)この受容体親和性の変化はCaMキナーゼIIによって誘発されることが明らかとなった。即ち、アゴニスト刺激に伴い活性化されたCa^<2+>/カルモジュリンは、受容体を細胞表面に保ち、その一方では、CaMキナーゼIIを介して受容体のアゴニスト親和性を低下させると考えられる。これらの新知見は、アゴニスト刺激に伴うGq蛋白質共役型受容体の分布及び機能の調節機構にCa^<2+>/カルモジュリン系が深く関与していることを示唆する。
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