リソゾームシアリダーゼはβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)と保護蛋白質の複合体(ポリマー)と結合することによって活性を発現し、また安定化すると云われている。今回β-Galと保護蛋白質の複合体形成に関わる分子間の相互作用について、表面プラズモン共鳴装置BIACOREを用いて検討した。単離したβ-Galモノマーをセンサーチップ表面に固定化し、保護蛋白質(48kDa)蛋白、それをメルカプトエタノールで解離して得た30kDa蛋白及び20kDa蛋白それぞれとの相互作用を調べた。その結果、β-Galモノマーは保護蛋白質と強い結合性を持つことが分った。保護蛋白質構成成分の中では20kDa蛋白と結合性を示し、30kDa蛋白とは相互作用は認められなかった。このことから保護蛋白質は30kDa蛋白部分がカルボキシペプチダーゼ活性を有しプロテアーゼとしての機能を持つこと、20kDa蛋白部分はβ-Galと結合し、β-Galポリマーの形成にに関与するものと考えられた。β-Galと保護蛋白質及び30kDa蛋白との結合性は、酸性溶液中では中性溶液中に比べより強い親和性を示し、結合にpH依存性の強いことが分った。今回、β-Galモノマーと保護蛋白質とによって形成されるβ-Galポリマーがシアリダーゼとどのような相互作用を持つかについて期間内に結論を得るまでに至らなかったが、今後継続してシアリダーゼ複合体形成機序の解明を試みたいと考えている。一方、下等動物シアリダーゼを精製し、高等動物に見られるような多機能性複合体を形成しているか否かについて検討した。精製標品のN末端アミノ酸配列を調べたところ、カテプシンDと高い相同性を持つことが分った。精製の進行と共に両酵素の比活性が上昇することから、両酵素が何らかの相互作用を持つ可能性が示唆された。シアリダーゼとカテプシンDのアミノ酸配列の高い相同性はどのような意味があるのか興味を持っている。
|