これまでに、培養マウス腎髄質内層集合管(IMCD)細胞におけるOsp94遺伝子の発現は、高浸透圧ストレスおよび熱ストレスにより増加することが認められてきている。そこで、本研究では、高浸透圧ストレスにおけるOsp94遺伝子の発現機構を明らかにする目的で、単離したOsp94遺伝子の上流領域(2.8kbp)の解析を行った。上流領域(2.8kbp)の塩基配列には、G/Cリッチで、クラスターを形成するSp1部位、並びに高浸透圧ストレス(TonE/ORE)および熱ストレス(HSE)に応答するエレメントに類似の配列が存在することが認められた。なお、TATA部位は認められなかった。上流領域(2.8kbp)を組み入れたルシフェラーゼレポーター遺伝子を導入された細胞では、高浸透圧ストレスおよび熱ストレスにおいて、ルシフェラーゼ活性の増加が認められた。そこでさらに、高浸透圧ストレスに応答するエレメント(Osp94-TonE)をSV40プロモーターを有するレポーター遺伝子に組み入れ、詳細に解析した結果、Osp94-TonEを導入したIMCD細胞におけるルシフェラーゼ活性は高浸透圧下において、顕著に増加した。さらに、そのエレメント配列に点変異を入れwild typeと比較した結果、高浸透圧によるルシフェラーゼ活性増加の抑制が認められた。したがって、このOsp94-TonEは高浸透圧感受性エレメントとして機能するものと考えられた。さらに、浸透圧応答エレメントであるOsp94-TonEに結合する転写因子の存在を検討するため、ゲルシラトアッセイを行った結果、高浸透圧下で処理されたIMCD細胞において、シフトするバンドが認められた。このことから、高浸透圧に応答し、Osb94-TonEに結合するタンパク質が存在することが明となった。今後さらに、Osp94遺伝子の浸透圧応答エレメント(Osp94-TonE)に結合する新規の転写因子等を解明していく予定である。
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